ココロ屋

こつこつこつ。 表通りを歩いているあの男性は 左目がない

どこかに置き忘れてしまったらしい まれによくあることだ

そこのベンチに腰掛けてくつろいでいる 犬連れの女性には鼻がない

右 左 右 左と 元気に振るはずの犬にも 尻尾がない

いつもお茶をする友人は右足がない

そういう僕も実のところ 数年前の暮れの大掃除の時期に

とっておいてもしょうがない物と一緒に つい耳を捨ててしまったみたい

誰しも ひとつはこーゆーものがあるらしい そーゆーもんだ

しかし、今日 偶然に電車で出くわした人には 目も耳も 手も足も

すべてあって、逆に不思議に思えるくらい 完全体であった

しかし、ウォークマンの音を 皆に聞かせるくらいに大音量だったり

混んでいる車内ででかでかと足を組み おそらく席を二人分にまたぎ、

かと思いきや 携帯電話で20分くらい大声で話だしたり

迷惑きわまりない人種の人だった

手でも足でもない その人がなくしてしまったものが一発で分った

一緒になって探してあげたいと思ったが、こればかりはその人が

その気にならないと無理なもので、非常に難しいもの

その人には ココロというものがなかった

日常、僕らが歩いている道に それが置いてあるお店は見つけられない

フト、いつもと違う道に 回り道したときに発見できるだろう

もしくは身近な友人や そばにいるその人にとって大切な人が

そのお店の場所を教えてくれるであろう。そして噂によると、 

そのお店のショーケースに並んでいて売っているたくさんのココロには

けして安くない値段がつけられているが、そのお店は実のところ

「お金は一銭もとらない」らしい。嘘 偽りなくそれを望めさえすれば

どんな人にも平等に与えて下さる そう聞いたことがある