ヒーロー

南風公園に、毎日来る紙芝居屋さんがいる

いつも決まった時間に、道具をかつぎ 自転車でやってくる

子供らは言うまでもなく おじさんが来るのを楽しみにしており

その時間になると サッカーや砂場遊びの手をやめ、たくさんの子供が 

その場所に座わり、おじさんが来るのを待ちわびている

そして、午後の優しい南風がふわっと吹いたと同時に 砂ぼこりをたてて

おじさんはいつもの自転車に乗ってやって来た

子供達の顔は 一気に笑顔へと変わり、ワァ〜っと歓声が上がった

ヒゲはモジャモジャだが、すっかり子供たちのヒーローだ

しかし、なぜか 今日のおじさんには元気がなく 

いっこうに紙芝居をはじめる気配がない ただうつむいているだけだ

どうやら紙芝居の最後の一枚をなくしてしまったらしい

そんな元気のないおじさんの姿を見て、翌日 子供達は力を合わせ

いつも元気をくれたおじさんに 今度は僕らが元気をあげるんだと

ほっぺや鼻の頭に絵の具をつけながら 必至になって絵を描いた

その絵をもらったおじさんは、とても喜び ついには紙芝居をはじめた

そのストーリーは悪者からお姫様を救う ヒーローものだった

救ってもらったお姫様が 最後に あなた様のお顔をお見せください と、

そのヒーローがくるっと振り返る 感動のシーン

紙芝居の最後の一枚をぺラっとめくると そこにはなんと

子供達が必至になって描いた ヒゲのおじさんの似顔絵が描かれていた

お世辞にも上手とは言えないが、絵の中でのおじさんはとても笑っている

子供たちの前で 一度も笑ったことのないおじさんが 

絵の中でとても輝いて笑っている。おじさんはおじぎをし、照れくさそうに笑った

そしてヒゲのおじさんは 本物のヒーローになった