ボクの大冒険
「ありがとうございました、またお越しくださいませ」
ウィーン ガシャン!!さてと..久しぶりの外だなー 空気もいいし、いい天気だ
あなたの腕に ブラリとぶら下がった僕は、しばし 外の光景を楽しんでいた
しかし、それも束の間 あなたは僕の体に手を突っ込んだ
ちょ..くすぐったい あはは.. やめてよ もう あはは..
膨れていた僕の体が 一瞬にして痩っぽっちになり、その瞬間 僕は捨てられた
フワリ風に舞い上がり、ここから僕の旅は始まった..
なんとも気持ちがいい、そしてこれが兄ちゃんの言ってた自由ってやつなんだな あはは 悪くない..
僕はなすがままに その風に吹かれてしばらく街をさまよった 
少しすると僕は何かに引っかかり、動けなくなってしまった
どうやら 植え込みの木の枝に引っかかってしまったみたい
まいったな、どうやっても外れそうにないな.. 街行く人に声をかけたりもしたんだけど
ガサガサとしか聞こえてないみたい あはは..まぁ しょーがないよね
突風でも吹いてくれれば万事解決なんだけど ってね.. ん?痛い痛い!!痛いってば!!
僕は何者かにガブリとくわえられた そしてその何者かは タッタッタっと小走りで走り出した
僕は必至にそいつを見ると 体中毛だらけで、フリフリと尻尾が見えた..こいつわ野良犬だな
おいおい どこに連れて行くんだよ 放しやがれって.. その野良犬は 裏の路地にさささと入っていった
魚の腐った臭いと 散乱しているガラスの破片 太陽の当たらないじめ〜っとした空気が一瞬にして漂った
しっかしこりゃヒドイところだな.. 表の世界とは大違いだ 
そんな野良犬は急にプイっと飽きたかのように 僕を置き去りにし、どこかへ消えていっちまった..
うそでしょ?置いてくなよ!?こんなところで僕の旅が終わってしまうなんて..
と、そう思った瞬間、キュルルルルル!!と何かが回りだした音が聞こえた
わぁお!!そして僕はまた飛ばされた どうやらお店の裏口にあった室外機が作動し、
そのファンの風に運よく巻き込まれたらしい
やっほーい!すごいぞ〜!! その調子で いけいけGO GO〜
僕はぐんぐん上昇し、せまい建物と建物の間を ぽーんと抜け 光の届く大空へ脱出した
ひとまず助かった 良かった 良かった.. うーん やっぱり空は気持ちがいい  
ポカポカとあたたかい太陽の光 おいしそうな雲 心地よい風に乗りながらついウトウトしてしまい
僕は眠ってしまったみたいだった.. そう僕は どのくらい寝てしまっていたんだろう?...
ん?なんだ?このひんやりと冷たくて固いものは?...はっ!?と僕は目を覚ました
しばらく空を舞ってはいたが、昼寝をしている間にだんだんと下降してしまい
どうやら 道路標識のポールに引っかかり、無惨にも ぱたぱたと巻きついた姿をさらしていたのだった
電線に止まっているハトがこっちを見て ニヤニヤ笑っている

オイお前っ!!笑うんじゃないっ!!失礼じゃないかい!?

もがいても もがいても そのポールから体が外れない
その姿を見たハトは さらに声を上げて笑った.. 僕はあまりの恥ずかしさに赤面してしまった..
頼むよ突風さ〜ん!!僕の体におもいっきり吹きつけておくれよ って、そう祈った瞬間..
バタバタ〜(汗)と何かにおびえたように ハトが飛んで逃げていった
僕は目を疑った!?やばい やつが来た、一番恐れていた やつが来たっ!!
そいつは大きくて真っ黒い羽をバタつかせながら、カァーカァーと甲高い泣き声でやって来た
そして僕の体を鋭いくちばしで カツッカツッと突っつき始めた 
うわっ痛い!!僕の体に激痛が走った オイやめろっ!!突っつくなって!! 
僕の体は一瞬にして穴だらけになり ボロボロになってしまった
もうダメだ..一巻の終わりだ..そう思い 諦めかけていたそのとき...!? 
スッっと大きな手が ボクをやさしく包み込んでくれた そして抱きかかえられた
シッシと追い払われた黒い羽は 少しの抵抗の末 カァーカァーと泣きながら向こうへ飛んでいった
そしてその大きくてやさしい手は、僕をしっかり抱きかかえながら
公園のゴミ箱へ そっと入れてくれた
僕はガサガサとしか聞こえないだろうとわかっていながらも、その大きな手にお礼を言った
そして、そこで僕の旅が終わったのだった..
「どうだった?旅は楽しかったかい?」 ふと 隣から声が聞こえた
「兄さんっ!!」
工場で生き別れをした兄さんに ゴミ箱の中で僕は再会したのだった
「うんすごく楽しかった!! すごい大冒険だったよ!!」
そーか、それは良かったな 兄さんはそう言った
「今度生まれ変わっても またこの姿のままがいい」
「そしてまた大冒険をするんだ〜」
「そーだな、じゃあまた来世も必ず会おうな」兄さんはそう言い残し、
僕と兄さんは、薄暗いゴミ箱の中で寄り添いあい 静かに目を閉じたのだった..