黒い太陽 |
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もうかれこれ300年近くも雨が降り止まない国があった
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その国の子供たちは、晴れた世界というものを知らず
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一度たりとも 太陽というものを見たことがなかった
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暗く沈んだ街並み じめーっとした空気 表を歩く人影はもちろんなく、
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この国の人々はそれが当たり前だと思っていた
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しかし、ある少年は そんな中でも光をさがしていた
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とても明るく 希望に満ちた キラキラした あったかい光
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周りの人々は、その光の存在を信じるとこなく、あの少年とはけして
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遊んではいけないよ と、周りの子供らに言いつけていた
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と、ある日 その少年は 深く深く暗い海の底に ついに太陽を見つけた
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海の水に浸かっているため、今はただの黒い塊で 光は発してはいないが
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その少年は きっとそれがこの国に光をもたらしてくれるものだと信じ、
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たったひとりで 海の底から引っ張り上げようとした
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大きな黒いカタマリに 縄を二重にも三重に縛り 固く結んだ
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そして力の限り その縄を思いっきり引っ張ってみたが びくともしない
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あまりにも大きく 重いカタマリを沈んだ海の底から上げるには
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たった一人の少年の力では到底無理なことであった
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その少年はみんなに助けを求めようと、何軒もの家のドアをノックしたが
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「お父さんがダメだって…」「外は雨だから行きたくない…」 などと
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誰一人、その少年に賛同してくれる子供たちはいませんでした
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少年は「いいさ、ひとりで引っ張り上げてやるさ」と心に決め、
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びしょ濡れで 泥にまみれた細い両腕を 再び縄に絡ませた
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足を踏ん張り 引っ張る 歯を食いしばり また引っ張ったが
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「やっぱり僕ひとりじゃ無理だ…」 そう思わず肩を落としたその時、
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縄にひとつ またひとつと 小さな手や大きな手が次から次へと
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重なっていくように 増えていった
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「実は僕らも、本当は光を見て見たかったんだ…」
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子供達 大人達 全ての人々が、その黒いカタマリへと繋がった縄を
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ぎゅっと持ち、せーので力を合わせて 思いっきり引っ張った
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するとその黒いカタマリは 水面から顔を出し、ぽーんと海から飛び出した
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人々は 輝きのないその湿った黒いカタマリに 両手をかざしてみた
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するとそのカタマリは、ふわっと空へと昇り 真っ赤に燃え出した
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その光は 強くもあり 優しくもあり、とてもあたたかいもので
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人々を包み込んでいくかのように光り輝いた
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そして ふと気づくと、もうすっかり雨は止んでいた
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