スタンプカード |
| ある朝、ひとりの赤ん坊が大きな産声を上げた。 |
| それはそれは父親にそっくりで、名前はまさおと名づけられた |
| そのまさおクンの首には なにかヒモがかかっていて、その先にはなにか二つ折りの紙がついている |
| 看護婦さんにそれは見えないよーだ もちろん両親にもそれは見えていない |
| 不思議と まさおクン本人にしか見えていない |
| その二つ折りのカード、 どーやら それはスタンプカードのようだ |
| そのカードには 「喜び」「悲しみ」「愛情」「失敗」など |
| 様々な項目が108個ほどあり、その言葉の脇にスタンプを押すような印がある |
| 人々はみんな、生まれたときに 自分にしか見えないスタンプカードを首からさげて生まれてくるようだ |
| 誰かに見せることなんてできない 誰かのものを見せてもらうこともできない |
| 互いにその話に触れようともしない 言いかえれば自分の「内面」や「経験値」を映し出しているからだ |
| そして、まさおクンは80年という生涯に幕を閉じた… |
| 人並みの人生を送り そこそこ幸せだった… |
| …ある日、ひとりの赤ん坊が大きな産声を上げた。 |
| それはそれは母親にそっくりで、名前はみちこと名づけられた |
| みちこちゃんの首には なにかヒモがかかっていて、その先にはやはりスタンプカードがついている。 |
| みちこちゃんは まだしゃべれないながらも 動けないながらも |
| そのカードを目にし びっくりした! |
| そのスタンプカードは まさおクンのものだった!! |
| そして、もうひとつ気づいてしまった事がある、 |
| わたしはまさおクンの生まれ変わりだ! みちこちゃんの前世はまさおクンなのだ!! |
| スタンプカードにある108個の項目をすべて肌で体験し、 |
| 「感じ」、「悩み」、「考え」、「乗り越え」たり、「修得したり」して |
| それぞれの箇所にスタンプがすべて押され そのカードが完成しない限り |
| 何度も何度も生まれ変わってくる |
| この世はそーゆーシステムでできているのだ。 |
| まさおクンは親の愛情に恵まれ、「愛情」のスタンプは押されていたが |
| あまい家庭で育てられたためか、貧しい人の心の痛みや、 |
| どんなことにも失敗を恐れず挑戦するということを知らず、 |
| 「人の痛み」や「成功の喜び」や「失敗の大切さ」という項目の印にスタンプが押されていなかった |
| そのことにようやく気づいたみちこちゃんは、 |
| いろんなところに目を向け 生涯を一生懸命に生きていこうと誓った。 |
| 地球が生まれ そこに放たれた人間という魂(人口)の数は けして最初から変わっていない |
| 草や虫に生まれ変わることもあるから人口数としては一定ではないが、 |
| スタンプカードを完成させていく魂(人)が旅立っていく分、どんどん減って行くことだろう |
| そして最後 この地球には誰もいなくなることだろう |
| …そして今、みちこちゃんは90歳になり、 |
| 長年寄り添った夫に看取られながら 最期の時を待っている… |
| みちこばあさんは、声にならない声で 夫にこう言った |
| 「…じいさんや…あたいは、じいさんと出会えて 本当に幸せじゃった…」 |
| じいさんは、ばあさんのシワシワになった手を握り こう言った |
| 「ばあさんや…わしゃ ばあさんとだから生きてこれた、すぐにあとを追うからのぉ 心配せんでなぁ…」 |
| 「…じいさん…ありがと…」ばあさんはそう言い残し、 |
| 最後のひとつである「愛」という箇所にスタンプをおした |
| その瞬間、おばあさんの身体が宙に浮き ピカ〜っと 光りだした |
| そして 涙を溜めていたその目を静かに閉じ、 |
| ばあさんは空高く 天に向かって 旅立って行った |
| そして、そのすべてそろったスタンプカードを静かに閉じ、 |
| ばあさんは キラリと 輝く星になった |
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